2016年6月14日火曜日

アルヒトの銃

大切に扱っていた愛銃が壊れてしまった。この街では身を守るために銃が必要というのに。護身用の小銃を納屋に置いたままであるのに、昨日鋤を取り出すときに気付いた。夜中銃を愛でていると、撃ちたい衝動に駆られて近所の野良犬を撃ったら狂ってマガジンが空になるまでぶっ放し続け、しまいには銃身がひん曲がってしまった。ああ、お向かいのご近所さんの玄関がボロボロ。まあ、この街ではよく在ることだ。誰の所存など、気にするものは居まい。この街の誰もが言う言葉に次のようなものが在る。

「銃は消費するものだ。」

そういうわけで、この街では身を守るために銃が必要なわけだが、わざわざ闇市場まで出て行かなくてはならなかった。面倒だが、命には代えられない。前行ったところと同じところに行くと、店主がにやけ顔で出迎えてくれた。

「また着たのか。」

「銃が完全にぶっ壊れちまったから、寄ったんだ。」

そういういうと店主は笑いそうになるのを堪えながら、店の中に案内した。店の中には凄い数の銃火器が揃えられており、この銃規制の国でどこから仕入れたのか全く分らない銃ばかりだった。
店主は外国製らしき珍しいフォルムの猟銃を愛で、おどけながら、私にこういった。

「外国の銃は凄いらしいぞ。リロードしたり、弾を撃つ事が出来るらしいぞ。」

私も店主におどけながら答える。
「そうか、それは幾らなんだい?」

「そんなものはこの国には無いぞ。」
警官が店の入り口に立っていた。銃を構えて、自分達を威嚇している。店主は怯えて裏口から逃げて行ったようで、自分も急いで裏口から逃げようとする。しかし、その瞬間無慈悲に銃声は鳴ったのである。


こうして、私は逃げることに成功して日記を書いているわけだが、私が無傷で銃を向けた警官から逃げられた理由としては警官がこの国で銃を撃ってしまったからだろうと思う。

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